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紫陽花物語 2

「何だか、お見合いすることになっちゃった。断ろうと思ってたのに」
瑠美は台所で客用の湯飲み茶碗を洗いながら、順造に話しかけた。
「静香の奴、なかなかやり手だな。主婦にしておくのは惜しい人材だ」
「えっと、静香おばさんは、確かお父さんの従姉妹よね?」
順造は頷いた。
「うちの縁談をまとめるのは、親子二代に渡っての悲願だからな。私も何度縁談を持ち込まれたことか・・・」
順造は、湯飲み茶碗を食器棚に仕舞う瑠美の後姿を眺めた。
「瑠美、私とお母さんのことは気にせずに、自分の思うとおりに生きていっていいんだよ」
「うん。分かってるよ、お父さん」

母の小夜子が無事退院し、家の中が落ち着きを取り戻しつつある五月の最後の土曜日、瑠美は早めに起きて家事をこなした。父の順造が家中掃除機をかけ、掃除機の音、洗濯機の音、台所の換気扇の音が混然としている。
三枚のバスタオルが初夏の光と風に楽しそうに揺れ、二階のベランダから見える庭は、百花繚乱の頃を過ぎ、落ち着いた清々しい緑に包まれていた。
瑠美は時計を見ると、慌てて下駄箱から靴を出した。
「じゃあ、お母さん、行ってきまーす」
順造が奥の部屋から現われた。
「お母さんが、折りたたみの傘、持ってけって言ってるぞ」
瑠美は傘など入りそうも無い自分の小振りのバッグをちらりと見て、玄関のドアを開けた。さわやかな朝の光が広がっている。
「傘はいいや。あ、お父さん、シチュー、薄味だから、自分の食べる分だけ、お塩ちょっと足して。そんなに遅くならないから・・・。パーマかけるから、時間かかるかな。何かあったら、携帯に電話して」
そう言うと、玄関を出ると駆け出した。

                     (つづく)

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