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紫陽花物語 3

窓越しに、頭にパーマのロッドを巻いた瑠美の横顔が見える。鏡に向かって、見事な髪形をした美容師と笑顔で話している。店の前には緑色をした小さな紫陽花の花が咲いている。
その何時間か後のこと・・・。
ばっちり髪をセットした満足げなマダムAが、美容室から出てくる。
同じく、ばっちりセットしたマダムBがにこやかに出てくる。
同じく、ばっちりセットした瑠美、美容室からうつむいて出てくる・・・。

曇った街並みの中、瑠美は前髪を引っ張りながら歩いていた。
小さなブティックの前で、ショーウィンドウに映る自分の顔を瑠美は眺めた。そして小さくため息をつき、下を向きながら歩き始めた。
「前髪がもう少しのびるまで、お見合いはのばしてもらおう・・・」
不意に、風の色が変わったような気がした。瑠美は立ち止まり、辺りをぐるりと見渡した。やっぱり、お母さんの言うとおり、傘を持ってくれば良かった・・・!
突然、大粒の雨が頬を打ち、地面がみるみる雨粒で黒くなっていく。激しい雨音。少し先の、古びた喫茶店の茶色い軒先が目に入った。
バッグを胸に抱え、瑠美は走り出した。
瑠美が一目散に喫茶店『あるびれお』を目指しているちょうどその時、店に入ろうとしている、もう一つの人影があった。

何かに強くぶつかり、瑠美は映画のスローモーションのように、バランスを崩した・・・。
喫茶店の前で頭から血を流して倒れている瑠美。白い横顔。固く閉じられた瞳。救急車のサイレンの音が遠く聞こえる・・・。
坊さんの坊主頭。読経が流れている。祭壇の白い菊の中、髪をばっちりセットした瑠美の写真。涙を流している喪服姿の父と母・・・。
(私、ここで死ぬわけにはいかない!)

気がつくと、瑠美は見知らぬ男性の胸にしがみついていた。
グレーの背広を着た男性は、しっかり瑠美の体を支えている。
その男性、佐藤直希の表情は不思議そうにも、面白がっているようにも見えた。
瑠美は、はっとしたように、体を離した。
「ごめんなさい・・・!」

                     (つづく)

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