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RAN5

「北朝鮮は、現在でも稲作不適地だといわれている」
「そう言えば、北朝鮮はいつも大変そうだ。ニュースを見るたび、いつも思うんだ。畑はないのか? 田んぼはどうなってるんだ?」
そして蘭太郎は、門馬から渡された資料に目を落とした。

農学、植物学、生態学の分野では米の伝来ルートについては支那南部から直接伝来したという説が定説だったが、考古学、歴史学の分野では朝鮮半島経由という考え方が有力だった。
しかし、7,8年前(2007年当時)からまず考古学の分野から変化が起き、次第に支那南部から直接伝来した説が有力になって、現在ではほぼすべての学界で定説になっている。また支那の稲作研究界ではむしろ水稲種は日本から朝鮮半島に伝播したという説が有力になっている。

この流れが加速したのは主に2つの理由がある。
遺伝子工学の分野からの研究の成果、もう1つは支那政府機関が20年以上かけて満州で行った品種の調査だ。この2つが決定打になり朝鮮半島経由で米が伝来した可能性がなくなった。
順を追って説明すると、米には品種特性を決定づける遺伝子が7種類ある。このうち古代から現代に至るまで日本で発見された米の遺伝子は2つしかない。日本に存在する遺伝子をNO.1とNO.2とする。
NO.1とNO.2の遺伝子はそれぞれ温帯ジャポニカと熱帯ジャポニカという品種の特有遺伝子だ。
次に稲作の発祥地である支那はもちろんNO.1からNO.7まですべて揃っている。
朝鮮半島の米はNO.2からNO.7までの6種類が揃っているが、NO.1だけは存在しない。これは気温が低いと存在できない遺伝子のため支那北部より北では存在できないためだ。
・・・往来が盛んになればなるほど、多くの種類の遺伝子を持つ米が入る確率が高まるが、日本には2種類しかないのが確認されていて、これが稲作開始の初期から広く分布していることから、米の伝来はごく限られた回数で特定の地域から伝来したと考えられる。
近年、炭素14年代測定法という最新の年代測定法の成果で朝鮮半島の稲作より日本の方がかなり古いことが分かってきている。日本の稲作開始は陸稲栽培で6700年程度前まで、水稲栽培で3200年程度前まで遡ることが判明している。
これに対し朝鮮半島では水稲栽培は1500年程度前までしか遡れない点、九州北部と栽培法が酷似していることや遺伝子学的に日本の古代米に満州から入った米の遺伝子が交雑した米が多いことなどから、水稲は日本から朝鮮半島へ、陸稲は満州経由で朝鮮半島へ伝わったことが判明した。支那政府の研究機関でも調査が進み間違いないという結論が出ている。
また、支那南部の日本の米の起源と推定される地域は熱帯ジャポニカも温帯ジャポニカも同時に存在しているので、両者を1品種ずつ持ってきたと考えられる。
往来回数が多くなると別遺伝子品種が紛れ込む可能性が高くなるので、古代人が遺伝子選別技術を持っていない限りはこの地域だけから流入したと考えるしかない。
また朝鮮半島の米はNO.2の遺伝子が70%を占めるので、米が朝鮮半島に導入された初期段階でNO.2の遺伝子が多く伝わっていなければならない。日本から2種類の遺伝子を持った米が朝鮮半島に渡ったものの、NO.1の温帯ジャポニカ種は朝鮮半島に根付かずNO.2の遺伝子のみが広まり、そこに満州から米が入ってきて、NO.2の遺伝子を持つ米と交雑したと考えると朝鮮半島の米に遺伝子的な説明が付く。
支那にはすべての遺伝子が満遍なくあるので、特定の種類の遺伝子だけを多くして朝鮮半島に伝えるのは無理だ。
米の伝来は支那南部から日本へ来たものであることを説明したが伊勢神宮にはこれを裏付けるような伝承がある。
「米は斉の御田から天照大神が持ってきた」(斉は現在の中国山東省)というもので、現在の学界では日本の米は支那の山東省付近という説がもっとも有力だ。
また、同地域にも一部部族が日本へ渡ったとする伝承がありこれを裏付けている。

さらに台湾の学者が鵜飼に着目した研究をしているのだが、これも日本への米の伝来が支那からであることを裏付けている。
鵜飼の風習は支那の楚の国(現在の湖南省と湖北省とその周辺)とその稲作文化圏である四川省、雲南省、広東省など中国南方の地方によく見られる。日本でも普通に見られる。
ところがこの鵜飼は朝鮮半島では古来まったく見られない。台湾や琉球文化圏でも鵜飼の習慣はない。このことは最初に米を日本へ持ってきたのが、支那南部の楚に起源を持つ人たちで経由なしで直接日本に伝来させたことを裏付けている。その人達が伝えた鵜飼が日本に広まったということだ。
なお、日本の品種改良技術は奈良~鎌倉時代に飛躍的に伸びたが、飛鳥時代にも籾の選別技術等が確立しており、5世紀頃には単位収量がアジアでトップクラスになっている。

日本が朝鮮を併合した時に朝鮮に日本の耕作技術が移出され、単位収量が併合前に比べて2.2倍という爆発的増加をみたが、これは灌漑設備の他、植物防疫、施肥法の伝授によるものだ。単位収量の増加は朝鮮における生活の安定をもたらし、食料計画の研究資料によると摂取カロリーが一日あたり併合前に比べて一人あたり400カロリー、摂取タンパク質量が一人あたり7グラムも増えた。栄養状態の大きな改善などにより併合後の朝鮮の人口は2倍以上に増加した。
支那も朝鮮と同程度の収量であったことなどをみると日本の稲作技術は20世紀初頭のアジアでは飛び抜けてトップであったことが伺える・・・。
http://blogs.yahoo.co.jp/deliciousicecoffee/12585608.html

蘭太郎は笑い出した。
「気が付くと、こう考えている。常に、文化は中国から朝鮮半島に伝わり、そして日本に伝わったと。完璧に刷り込まれている。恐ろしいものだな。教育とは」
蘭太郎は、改めてその分厚いファイルを眺めた。そして「日本人はどこから来たのか」という、ところどころに鉛筆でモ書きされた資料に目を留めた。
「いつか歴史小説を書きたくて、気に入った資料を集めてるんだ」門馬ははにかんだように微笑んだ。「だが皮肉なことに、余り調べすぎると、想像力の翼が縮んでしまう・・・」
「門馬君、読んでもらえないかな」
日はとっぷりと暮れ、門馬は街灯の明かりを頼りに語り始めた。蘭太郎は、夕闇に沈む風景を眺めた。
何の変哲のない風景が、かけがえのないものに変わっていく。
「縄文人たちがどこから来たのかということについては、最近の遺伝子の研究で、ずいぶん明らかにされています。
・・・日本人とそっくりの遺伝子を持っているのは、どうやらバイカル湖のほとりあたりの人たちです。
日本人のルーツは、北方型蒙古系民族に属するもので、その起源はシベリアのバイカル湖畔にあるようです。
もうひとつ大切なファクターがあります。
気温の変化です。
過去35000年の気温変化をみると、一万八千年前~二万年前に極寒期があり、現在より気温が7~8℃低かったのです。このときの海水面は現在より120~140m低かったのだそうです。
海峡深度との比較から、北海道は宗谷海峡、間宮海峡がシベリアとかなりの期間繋がっていた。つまり、もともとバイカル湖畔あたりにいた人たちが、地球気温の寒冷化によって南下をはじめ、樺太から北海道を経て、日本の本州に棲みついたというのが真相のようです・・・」
「北海道から渡ってきた。そうか、だから世界最古の遺跡は青森県にあるのか・・・」
「日本人がどこから来たのか考えるとき、なぜか、小さな男とその両親の姿が浮かぶんだ・・・。極寒の寒さから逃れ、身を守るため、凍った津軽海峡を渡る、小さな男の子とその父親と母親の姿が目に浮かぶ。
先頭に立って進もうとする父親に、男の子はこう言うのだ。
「僕の方が軽いから」
そう言って、男の子は長い棒を持ち、氷の感触を確かめるように先頭に立って歩き始める。
夜明けを待って、出発したのだろうか。空には有明の月が残っていたのだろうか。どれくらい歩いたら、陸地に辿り着けたのだろうか・・・」
蘭太郎は微笑んだ。
「その男の子は、俺たちのじいさんだ。勇敢で、心優しき男(おのこ)だ。・・・名前は、何ていうんだ?」
「えっ?」
「その男の子の名前だ。人は人に、いつから名前をつけるようになったんだろう」
「名前をつける。まさに、人が人になった瞬間かもしれない。・・・歴史とは、推理小説であり、恋愛小説であり、戦国武将の生き様などから経営者の心得を学ぶ場でもあり、DNAを筆頭とする科学の実証の場でもある・・・。そして、気象学でもあり天文学でもある」
「天文学・・・?」
門馬は頷いた。
「卑弥呼が殺されたのは、西暦二四八年九月五日。皆既日食のあった日だった。・・・。本能寺の変が起こったのは旧暦の六月一日。空に月は無かった」
門馬は空を見上げ、オリオン座を指差した。
「あの星の名はペテルギウス。地球からの距離は五百光年。今、僕達が見ているあの星の光は、信長の時代のものだ・・・」

                         (つづく)
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Nさん、いつもありがとうございます。
とっても気になるサイトがあって、Nさんにも見て欲しいのですが・・・。
http://quasimoto.exblog.jp/
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