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ラーメンの神様(シナリオ)

このところ、ずっと家の中の片づけをしていた・・・。

「ラーメンの神様」

○錦糸町・駅前の路上
 まばらな観客。木枯らしが吹いている。
ギターを抱え、弾き語りしているシン(20)
 歌「誰の記憶にも残らないほど、鮮やかに消えてしまうのも
悪くない・・・」 
 サングラスをかけた、短い髪のミユキ(40)、ビルの陰から、
シンを見つめている。
 歌「信号が何色でも、ブレーキなんてふまない。
こわれてもいいんだ・・・」
 サングラスをはずすミユキ。
 冷たい風に追い立てられるように、歌を終え、片付け始めるシン。
 ギターケースに入れられる、一万円札に気 がつく。
驚いて、顔をあげるシン。
ミユキ「・・・おつり」
 片手を出すミユキ。
ミユキ「久しぶりだね。元気だった?」
シン「あ・・・」
 微笑むミユキ。ゆっくり立ち上がると、少し歩いて、
半分だけ振り返る。
 急いで仕度をして、ミユキのあとを追うシン。
     
○ラーメン「ここのつ」・外
 「準備中」の札がかかっている。
 並んで立っている、ミユキとシン。
夕日の赤い光が、あたりを包んでいる。
ミユキ「寒くってさ、ラーメン食べたかったんだ」
 華やかに微笑むミユキ。
 躊躇せず、ドアを開けようとする。驚くシン。
シン「まだ・・・」
ミユキ「準備中だから、いいの。中に人がいる」
 ドアを開けるミユキ。

○ラーメン店・中
 店に入ってくるミユキとシン。
 迎える真鍋。
 8席のカウンターだけの、狭い店内。
真鍋「へい、いらっしゃい」
 カウンターに、椅子一つあけて、並んで座る、シンとミユキ。
真鍋「まいど」
 微笑むミユキ。あたりを見回すシン。
真鍋「ご注文は?」
 メニューを手に取るシン。しばらくの間、眺める。
シン「とんこつ」
ミユキ「塩」
真鍋「はいよ!」
 正面を向いたままのミユキとシン。
シン「普通、とんこつだろ」
ミユキ「まずはシンプルに塩よ」
 二人を眺める真鍋。
ミユキ「まだ、人生ってもんが分かってないわね」
シン「あんたに言われたくない。
・・・それに、幼稚園で塩ラーメンは卒業したんだ」
真鍋「ま、ゆっくり決めてくれ」
シン「おじさんのオススメは?」
真鍋「・・・味噌、だな」
 仕込を再開する真鍋。
 メニューをじっくり眺めるシン。水を飲むミユキ。
黙ったままの二人、じっと前を向いたまま、座っている。

○ラーメン店・外(夕)
 暖簾が風にはためく。
 薄闇があたりを包む。
   

○ラーメン店・中(夕)
 トイレに立つシン。
シンの後姿を見送り、真鍋に話しかける、ミユキ。
ミユキ「今年ももう終りね」
真鍋「お客さんがこの店に初めてきたのも、
こんな風の強い日だった」
ミユキ「覚えててくれたんだ」
真鍋「一度でも会った美人は忘れない」
 微笑むミユキ。
真鍋「美味しいって言って、泣いた客は初めてだった」
 目を伏せるミユキ。
真鍋「息子にも食べさせてやりたいって、泣いてた」
 トイレのほうに目をやる真鍋。
真鍋「・・・息子さんだろ」
ミユキ「分かった?」
真鍋「そりゃわかるさ。目のあたりがそっくりだ。
それに、今まで何人の客を見てきたと思う?」
 うなずくミユキ。
真鍋「何か深い事情があるんだろう。別れたわけを話してやりな。
もう、たいていのことは理解できる年だ」
ミユキ「・・・言い訳はしたくない」
 首を振る真鍋。
ミユキ「一生恨まれたままでいいの。その方が」
真鍋「みんなのため、か・・・」
ミユキ「ひどい母親でいなきゃ、あの子の妹のためにも」
真鍋「でも、あの子は、あんたが話してくれるのを待ってる」
 真鍋の顔をやさしく見つめるミユキ。
真鍋「おれの顔に、何かついてるか」
 首を振るミユキ。
ミユキ「単語しか話せないのかと思ってた。
めし、風呂、寝る。塩、とんこつ、味噌って」
 にやりと笑う真鍋。
真鍋「・・・ラーメンの神様ってぇのは、恐ろしく無口なんだ」
 トイレから帰ってくるシン。
真鍋「ちょっと出てくる」
前掛けをはずす真鍋。
真鍋「留守番、頼むわ」

○ラーメン店・外(夜)
 とっぷり日が暮れている。
「準備中」の札を「本日貸し切り」に替える真鍋。
 店の中の、温かな灯り。

○ラーメン・中(夜)
 正面を向いたままの二人。
シン「・・・幸子は、お父さんの子じゃないんだろう?」
ミユキ「え・・・?」
 不安げな表情を浮かべるミユキ。
ミユキ「誰から聞いたの?」
シン「去年。おばあちゃんが。・・・死ぬ前に。
大丈夫だよ。誰にもしゃべってない」
ミユキ「今のお母さんは、お父さんの初恋の人だったの」
 水を飲み、深いため息をつくミユキ。
ミユキ「知ってると思うけど。私は父親のない子なの。 あの人が
初めて好きになった人の子供に、そんな思いを
味あわせたくはなかった。無事に幸せに生まれてきて欲しかった」
シン「だから、あの時泣いてたんだ」
ミユキ「本当は、シンを連れて行きたかった。
何か、もっと、うまいやり方があったのかもしれない。
 よりによって小学校の入学式の日にいなくなってしまうなんて」
シン「分かってたんだ。ずっと。入学式の朝、僕の仕度をしながら、
お父さんとお母さん、どっちが好き?って聞いたね」
ミユキ「シンは、迷わずお父さんって答えた」
シン「お父さんはお母さんが大好きだった。それで僕まで、
いなくなったら、お父さんが可哀想だと思ったんだ」
 小さく、うなずくミユキ。
シン「おばあちゃんも、すごくいい人だった。
もちろん、新しいお母さんも。 幸子はほんとうに
可愛いかったし・・・でも寂しかった。
お母さんも、寂しかった?」
 前を向いたままの二人。ミユキの唇が震える。
帰ってくる真鍋。二人の顔を見ず、あっさりと。
真鍋「ご注文は?」

○フラッシュ
 乾いた瞳のシンとミユキ。
ミユキ「塩」
シン「とんこつ」

○ラーメン「ここのつ」店内(夜)
ミユキ「とんこつ!」
シン「塩!」
真鍋「はいよ!」
 顔を見合わせる二人。涙をぽろぽろとこぼすミユキ。
まぶたを拭うシン。
 ラーメンを作る真鍋の見事な手さばき。
真鍋「へい、お待ち」
 シンとミユキの前に置かれる、二つの美しいラーメン。
ぽかぽかと立ち上る、温かな湯気。

○地方都市・駅前
 タクシーに乗る長い髪のミユキ(43)
 車内のラジオから流れだす音楽。
歌「誰の記憶にも残らないほど、鮮やかに消えてしまうのも
悪くない・・・」
 顔を上げるミユキ。
ミユキ「運転手さん。少し、大きくしてもらってもいいかしら」
 嬉しそうにボリュームをあげる鈴木。
鈴木「・・・いい歌でしょう?」
ミユキ「なんて曲なんですか」
鈴木「ピロウズのスワンキー・ストリート。
大ファンなんですよ。僕。去年は、武道館の
 20周年記念ライブにも行きました」
歌「水溜りに映る夕日はオレンジで悲しげで少しあたたかい。
僕ら何も言わないけれど。
 おんなじことを感じてるって知ってる」
 窓を開け、夕映えに染まる街を眺めるミユキ。瞳が涙できらめく。
 地平線の向こうへと続いていく道。

http://www.youtube.com/watch?v=DTjiCwtW7rs&NR=1&feature=endscreen

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誰も悪い人はいない。でもみんな少しずつ寂しさを抱えている.
暖かい食べものは、ひととき寂しさを癒し、こころをつないでくれる.
ラーメンの神様は無口な仕事人。

ありがとうございます

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